記号は正しく使おう

スタイルは流動する.でも守るべきスタイルがある.

1. コンマ・ピリオドか句読点か

古来日本語は句読点「、。」で止めるものである.実際また日本語は本来縦書きであり,したがって縦書きの文章は句読点を用いるべきである.ところが,理科系の論文のように横書きだとコンマ・ピリオド「,.」の方が勝手がよい.理由の第一は英字や数式が入り込むことであり,それらは「,.」で止めるべきものであるからである.

 例) したがって xxxがyyyのとき, 
 xxx = yyy。 

ってのは何かかっこ悪い.式も文の一部であり,したがって必ず句点かピリオドかで止めなければならない.ならばやっぱり,

 xxx = yyy. 

といきたい.

ところで「,.」にも2バイト文字がある.そう言えば( )も!も?も@も,そして英数字すらもJISの「漢字」がある.なぜ半角・全角の両方が必要なんだかよくわからないが,日本語の中では全角のものの方が見栄えがいいというのならそこは譲ろう.しかし英数字の中では半角のものを使うべきである.一つの英数字列の中に全角・半角が混在するというのは道断である.ところで混在と言えば,「,。」の組み合わせや「、.」の組み合わせを許せるか? 日経サイエンス誌は前者の組み合わせである.でもこんな混在用法はやめようや.

2. コンマ,ピリオド,コロン,セミコロンのあとにはブランクを

これらはもちろんすべて半角 (1バイト) 英数字での話.タイプライター時代からの大事な伝統である.これはいまも守られるべきである.タイプライター時代にはピリオドの後にはブランク2個と言われたもんだ.とにかく半角のコンマの後にすぐ次の文字が来た日には見ていて狭苦しいったらありゃしない.ついでに言うと半角の ( ) を使う時はその前後にも半角スペースを空けよう.もっと言うと,一つの文書の中で全角から半角に切り替わるとき,半角から全角に切り替わるときは半角スペースを空けよう.

3. クォートとバッククォート

よく見るまでもなく,

 ` と ' 

って明らかに違う文字.ちゃんと区別しよう.前者はクォートを始めるとき後者は閉じるとき.ときどき平気で ‘xxx’ なんて書く人がいる.この用法は UNIX のシェル・スクリプトをはじめ,プログラミング言語の中でより少ない記号でやりくりしようという場面においてのみ許されるべきことと考える.正しくは `xxx’ である.もちろんダブルクォートも開始は “ で閉じるときに ” である.

クォート開始は一般にはキーボード上のバッククォートキーを使うが,マイクロソフト社 Word では通常のクォートキーを使ってもクォート開始だとちゃんと後ろを向いてくれる.便利なんだか不便なんだか.Mule
の TeX モードでダブルクォート開始はバッククォートを2回打つが,今度は " もご丁寧に ”(クォート2回) に分解してくれる.

4. クォートとダブルクォートと「 」と,そしてイタリック

クォートとダブルクォートの使い分けは? 原則はダブルクォート “…” であり,その中でさらに引用があるときは

 ``.....`....'.......'' 

のようにシングルクォートを使うということである (cf. The Random House Dictionary: Basic Manual of Style).ところが最近はダブルクォートなしでシングルクォートもよく見る.見ていると短い語句にはシングルクォート,完全な文を引用するにはダブルクォートが使われているようである.何をもって正しい書法と言うのかわからないが,多数の人が使えばいつの間にか市民権を得てしまうのが言語の約束だから….

シングルクォートもダブルクォートも,最後のコンマやピリオドは中に取り込むのが原則.

 John said ``I ate an icecream.'' 

ところが上の例だとロジカルにはピリオドは二度打つべきだし,それも煩わしいので一度だけというならむしろダブルクォート閉じの外に打つべき,と考える人が最近増えたらしい.出版物の中でも最近はコンマ・クォートを外に打つスタイルが認知されつつあるようである.良し悪しの問題ではないが,好き嫌いの問題? あるいは,美的かどうかの問題か? 言語は流動する.

英文の中でクォートを強調のために使うことがある.これももちろん正当な使い方ではあるが,クォートはクォートというくらいだから引用に使うことにして,文書整形なんでもできる今,強調にはイタリック (斜文字) を使おう.英文で強調にボールドフェース (太文字) を使うのはやり過ぎの感あり.しかし和文ではイタリックがないのでボールドフェースがいいと思う.以前より下線を引くという作法もあるが,下線はやはり字体が自由にいじれなかった時代の名残りではないだろうか.ついでに言うと,文献リストの中では雑誌名・書名はイタリックにするように.

引用の話ついでに.日本語の中で日本語を引用するときは「このように」角かっこを使うべきであり,“こんなこと”はやめよう.英文を参照するときは間違っても「xxx」なんてしないじゃないか.

5. ダッシュとプライム

数式の中で記号の右肩にちょんとつけて微分だのを表わす記号.これはキーボードからクォートで入力するが,LaTeX なんかだと通常のおたまじゃくし形 ‘ ではなく,ちゃんと違うフォント (細長い台形) に表示してくれるはず.区別すべき記号なのである.数式の中で微分のつもりでf ‘ (x)などと書いてはいけない.このままだとアポストロフィ? クォート閉じ?

さて数式の中の ‘ はよく「ダッシュ」と読む人がいるが,英語の dash は横棒であり,- こんな風に使うやつ – である.ハイフンよりは長めの横棒である.英語では数式中の ‘ は prime (プライム)なので間違いなきよう.

6. コロンとセミコロン

セミコロンは,一つの文の中で接続詞以外で節どうしを結ぶとき,あるいは hence, therefore, however などに先行して用いられる.要はコンマより強く区切り,ピリオドより弱く区切る接続である.だから原則

 文 ; 文.

の形態. これに対してコロンは文同士の接続ではなくて,

 語句 : 文.

というふうに語句と文の関係だと思うとわかりやすい.この原則をちょっと一般化して,“… are as follows: 語句,語句,語句 あるいは “This is the issue: 文 などというパターンもある.後者はコロン以下の文が`This’という語の内容になっている.またコロンには To whom it may concern: や To: Mary など手紙やメモの中で用いられる用法がある.

7. 図や表の参照

その昔 LaTeX が流布し始めたころ,図や表の環境を作ると図番号・表番号の後に`:'(コロン) がつくというので話題になった.こんなスタイルはない.

図表は図表番号のあとスペースを空けてキャプションを書く.ただし,図番号・図キャプションは図そのものの下中央に.表番号・表キャプションは表そのものの上の中央に配するべし.これは LaTeX なら自動的にやってくれる.

論文中の参考文献の書き方はこちらを参照のこと.